すずわん日記

40代でサラリーマンの限界を感じました。これを良い経験として、この後の人生を楽しく豊かに過ごせるように考えたことを書いていきます。

沢庵和尚の不思議な言葉

先日、仏教の「空」「縁起」について書きましたが、その時に思い出したことがありました。

井上雄彦さんのマンガ「バカボンド 29巻」で、沢庵和尚というお坊さんが、主人公の宮本武蔵に言った不思議な言葉です。

 

お前の 生きる道は

これまでも これから先も

天によって完璧に決まっていて

それが故に

完全に自由だ

 

沢庵さんは、タクアン漬けを発明したとか、関東に持ち込んだ、とか言われている、有名なお坊さん。

以前、この言葉とそのストーリーの前後を何度も読み直したのです。意味がわからないから。

わからない、というのは悪い言い方で、もっと細かく言うと、わかったようでわからない。

わかったらスッキリしそう。

なので、何度でも読み直しましたが、結局その時はわからなかったです。

 

でも、先日思いました。

ブログの上で「空」「縁起」について解釈をしながら、沢庵さんの言葉に似てる、と。

わかる気がしたので、もう一度読んでみます。

 

何に祈るのか?

京都の一条寺下り松で、吉岡一門七十名と決闘して勝利した武蔵。しかし自身も足に大怪我を負ってしまいます。そこに旧知の沢庵和尚が訪ねて来ます。

怪我の療養中、合掌をする仏像を掘る武蔵に沢庵さんは聞きます。

 

七十人も人を斬った後、何に祈るか?

 

武蔵は、自分の歩いて来た道に祈ると言いました。

武蔵の歩いてきた道は、まさに自分が強くなり、相手を倒す道です。

仏像が合掌しているのは倒した相手に対するものでしょうか。

 

執着は自分を苦しめる

沢庵さんは、相変わらずお前は「我執」ばかりだ、と武蔵に指摘します。どこを切っても自分の事ばかり。

一般的に「我執」というと、自分の我を通す事や、ワガママ人間のように読んでしまいます。

でも仏教的な読み方をすると「自分の心身の中に、永久に変わる事のない実体があると考えて物事に執着すること」だそうです。

このシーンは仏教的解釈が必要で、この解釈が無いと、おそらくこのやり取りは理解できません。

武蔵の場合、自分は永久の存在で、その実体である己は剣で最強にならなくてはいけない。

しかしその執着の為に、吉岡一門七十人は死に、その家族は悲しみ、それ以外にも何人もの相手を殺して来ました。

武蔵も、人の命の大切さは気づいているのですが、自分が最強になる、という「我執」に捉われ、勝ち続ける事から抜け出すことが出来ない。だから苦しいのです。

剣じゃなくても同じ。

自分はこうあるべき、なぜ他人は自分に対してああなのか、など、自分がずーっと同じモノだと考えて執着を持つと、人間は苦しみに捉われます。この「我執」を捨てろ、という事ですね。

そう。「我執」を捨てる事は、「空」を実践する事と同じです。

 

関係性に飛び込み、成長する

続けて沢庵さんは言います。

 

大怪我をしたのであれば、天は戦うのをやめろ、と言っているのでは?

幼馴染のおつうと一緒に暮らせ。

江戸で将軍家に仕えてみろ。

 

武蔵は、おつうに好かれ、将軍家にも、世間にも求められています。

沢庵さんは武蔵の成長のために、「我執」を捨てて、違う道を生きるように説きます。

違う道に進み、触れ合い、変わり、自分の関係性を広げて成長していく事。これは「縁起」ですね。

 

どうにでもなれ

そんな沢庵さん自身にも「我執」がありました。

人を救う方法を懸命に探しても見つからず、人間の世に絶望した事があります。

その時、沢庵さんの「我執」がムクムク出てきて、そんな事アホらしい、やめろ、と沢庵さんを苦しめます。

そこに天の声が聞こえたそうです。

それが冒頭の言葉。

 

お前の 生きる道は

これまでも これから先も

天によって完璧に決まっていて

それが故に

完全に自由だ

 

これまでも、これから先も生きる道、というのは、自分の関係性の中にしかありません。

関係性というのは、自分が産まれる前からあるものです。つまり関係性は「天」によって完璧に決められています。

しかし決められてはいても、その関係性はシンプルなものではなく、無限の因縁で出来上がっているものです。

だから執着を捨てて「もうどうにでもなれ」と関係性に身を委ねた時、無限の因縁と交わりが始まり、自由が手に入る、と。

この交わりを沢庵さんは、どこか根っこで天と繋がっている、と表現していると解釈しました。

天と繋がっている、っていう言い方はカッコいいですね。

 

今回の長期休暇も、どうにでもなれ、です。

 

バガボンド(29)(モーニングKC)

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